流体の運動方程式

流体の運動方程式についていろいろ考えた。
なぜdensityを時間の全微分の外に出せるのか?

普通、教科書を見れば流体の運動方程式
$\rho \frac{dv}{dt} = - \frac{\partial p}{\partial x}$
と書いてある。

かのランダウ・リフシッツですら、これは何の説明もなく用いている。
しかし、いままで積み上げてきたことを単純に適応するのならば、それは常に正しくあるべきだと僕は信じるのだけれど、この式は疑ってしかるべきだ。
なぜなら運動量のラグランジュ的時間変化こそが、左辺にあるべき量であり、とするならば、それは$\frac{d \rho v}{dt} $のはずだ。


とりあえず考えたことを書き連ねてみよう。
もしかしたらその内に答えに辿り着くかもしれない。


先も書いたが、もう一度始めから。
ベクトル表記ができないので、流体の運動方程式を一次元で書くと、
$\rho \frac{dv}{dt} = - \frac{\partial p}{\partial x}$
これが目標の式だ。
ここから導かれる多くの示唆が物理現象を正しく表現するのだから、この式を是非導きたい。


でも、元の式、つまりNewtonの運動方程式
$\int \frac{d\rho v}{dt} dV = - \int \frac{\partial p}{\partial x} dV$
の"はず"だから、これをなんとかして上式にもっていかないといけない。

ぱっと見、$v \frac{d \rho }{dt}$の項が邪魔に感じる。
これ、計算すると消えるのだろうか?・・いや、消えるわけがない。
この考え方はダメだ。


こう考えると理解できるかもしれない。とまた考える。
この式の意味を考えてみる。

左辺は言わずもがな、流体素片全体の運動量のラグランジュ的な時間変化だ。
右辺はどうだろう?
圧力そのものでなく、圧力の"合力"になっている。
つまり、流体の変形を生じさせる力は考えていないことになる。
したがって、この式に積分記号のある限り、流体の変形は無視してよいことになる。
となると$\rho$は一定だから、
$\int \rho \frac{dv}{dt} dV = - \int \frac{\partial p}{\partial x} dV$
となる。
さて、これは任意の体積要素に対して成り立つので、結局、
$\rho \frac{dv}{dt} = - \frac{\partial p}{\partial x}$
となる。わけだ。


・・言ってる自分が納得できない。
この言い分だと、体積要素を変化させようとする圧力が無視されているが、その力はどこへいく?
密度変化は状態方程式に任せてしまおうというのだろうか。
だが仮にそうだとすると、運動方程式が運動を完全に記述していない。
つまり、今決めた流体要素を半分に割って新しい流体要素としたとき、2つの流体要素にかかる力は変化する。
するとこれは先ほどの式とは異なった運動をすることになる。
(片方は上へ、他方は下へ。これは先の一方向への運動とは明らかに異なる。)
腑に落ちない。
一体何が悪いのだろうか。


思うに、上で述べた運動方程式が正しくない。
正しくは
$\frac{d \int \rho v dV}{dt} = - \int \frac{\partial p}{\partial x} dV$
であるべきで、微分積分の中には入れてはいけない。
なんとなれば、積分領域それ自体が変化する流体素片の体積だからだ。
こうするとvを場と捉えること(流体素片中の速度を平均量$\bar{v}$とすること)で式は
$\frac{d \int \rho \bar{v} dV}{dt} = - \int \frac{\partial p}{\partial x} dV$
と変形される。

後は計算してみるしかない。
今、微小体積を考えて$\delta V$とする。
この体積中で$\rho$は一定で、従って式は
$\frac{d \rho \bar{v} \delta V}{dt} = - \frac{\partial p}{\partial x} \delta V$

さて今簡単のために、一次元で考えて、この$\delta V$$\delta x$とする
時間微分を適宜計算してゆけば
$\rho v \frac{d \delta x}{dt} + \delta x \frac{d \rho v}{dt} = - \frac{\partial p}{\partial x} \delta x$
ここで$\frac{d \delta x}{dt}$は右端と左端の距離の単位時間当たりの進化だから、右端と左端の速度差($\delta v$)と書けることを用いて
$\rho v \frac{\delta v}{\delta x} + \frac{d \rho v}{dt} = - \frac{\partial p}{\partial x} $
$\rho v \frac{\delta v}{\delta x} + v \frac{d \rho }{dt} + \rho \frac{d v}{dt} = - \frac{\partial p}{\partial x} $
ここまでくれば、連続の式によって第一項と第二項がキャンセルすることがわかり、
結果、求めたい運動方程式が求まった。


あら。
計算できちゃった。


残す疑問は先の考え方は正しかったかどうか、である。
仮の元の式の右辺において、合力は一つのベクトルになってしまっていて、内向きの力の大きさは縮重してしまっている。すると密度の変化は追えないために、これを一定とした。
が、もちろん、これはおかしい。
変化が追えないのなら、一定とすることもできないのだ。
したがって、すぐ上の計算が正しい結論を導く唯一の考え方のように思う。

どうだろうか。